イエスの生涯 (新潮文庫)



イエスの生涯 (新潮文庫)
イエスの生涯 (新潮文庫)

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イエス・キリストの無限の愛。

 遠藤さんは、お父様、彼らをお許しください、彼らは自分たちが何をしたか、わかってはいないのです、というイエスの言葉を、お父様、彼らをお許しください、彼らは愛し方を知らなかったのです、と解しておられた。
 そもそも、愛、とは何なのでしょうか。目には見えないもの、実際には役に立たないもの、そう遠藤さんは言っておられたような心持がするのだが。
 障害を抱えている私にとって、出来ることなら、この障害から逃れたい、「普通」になりたい、という思いがあることは否定できない。しかし、もし、本当にイエスのような奇跡を行う方が、目の前に現れ、自分の障害を取り除いて下さったら、私は本当に幸せになれるだろうか? 生れ落ちてからこの方、自分はずっと、障害を背負ってきたのに、それを、「暴力的」、と言ってもいいほどに取り除いてしまったら、「なんだ、僕をバカにしているのか! 苦しんだ僕の二十何年は、いったい、なんだったのか、僕の時間を返せ!」と、かえって憤慨してしまうかもしれない。それよりも、遠藤さんのおっしゃるとおり、僕の苦しみを一緒に苦しんでくれるイエスのほうが、よほど愛にあふれている。自分の幸福など、目もくれず、苦しむ人と一緒に苦しんでくれる、イエス。「無力」であることによって、無限の愛を示すイエスの姿は、なんともありがたく、また、美しく、僕の目に映った。
劇団四季で、ジーザスを見た方は、ぜひ!!

ジーザスの舞台を見る前の参考にと、読みました。
久しぶりに読み応えのあるものを読んだ気がしました。
舞台終了後、再読。神の子イエスというだけでなく、
人間イエスとしての苦悩が伝わってきました。
また、聖書を読んだことはあったのですが、よく理解できず、文字だけを
追っているような感じだったのが、なんとなくですが、理解できる?読み方
がわかる?というか身近なものになってきた気がしました。
 曽野さん、三浦さんなど他の作家の方のイエスに関する本も
読んでみたくなりました。イエスの乾きとは・・・
極上のエンターテイメント

信念のために頑張る男が死を選ぶことにより信念を成就させる話です。

イエスを中心に当時のユダヤ人の生活状況や時代背景、ローマ帝国、ユダヤ衆議会の策略が絡みあい背景も非常におもしろいです。

またユダとイエスの関係が裏切り者と裏切られた者でなく、作者独自の解釈で書かれておりいい意味で衝撃的で心震えました。

弱い人間である弟子達がイエスの死により変わっていく様も感銘をうけます。

誤解され傷つきながらも自らの信念を貫くために歩むイエスの苛烈な生き様をぜひ読んでほしいです。

小説はとっつきにくいという方にはダイジェスト版『遠藤周作で読むイエスと十二人の弟子』(新潮社)がオススメです。カラー写真も豊富で読みやすいです。(私もこれを読んで小説を手にとりました。)

以上キリスト教云々でなく小説のおもしろさで語らせてもらいました。
人間的な魅力を持つイエス

遠藤周作が、日本人の小説家としての観点からイエスの生涯を綴った本。しかしそこから導きだされるイエス像は決して偏狭なものではなく、国家を超えた普遍的なものを持って我々に迫ってくる。最終的に現れてくるイエスは非常に単純明快な意味での『愛の伝道者』なのだ。

これだけを書くとありふれた事しかこの小説には書かれていないと思えるが、そこに至るまでの話の運び方が秀逸である。様々な紆余曲折、イエスの孤独な悩みの描写を経たのちに辿り着くこの結論は、ただ結論だけを述べられるよりも遥かに分かりやすさと深みを持って理解される。

著者は聖書で語られているイエスの奇跡描写の言及を極力排し、あくまで一人の人間を見る目でイエスを見つめる。そこには奇跡を行うことで、苦しんでいる者を具体的な苦しみから直接救うイエスは描かれていない。

苦しんでいる者は、病気などの具体的な苦しみよりも、むしろ誰からも愛されないという苦しみが根本にあると言う事をイエスは熟知していた。そして深く同情し、自らが彼とともに苦しむ事によって彼の根本の苦しみから解放しようと言うのがイエスの愛だ。奇跡的な側面を描かない事で、このような『愛』の構造がより深く理解できる。そしてこのように描写されたイエスは、いっそう人間的な魅力を持つ人物として我々の目に映る。

この他にも、このような考え方のイエスがなぜ当時の人々に全く理解されなかったか、ユダはどんな感情の変遷を経た後にイエスを裏切ったのか、などの興味深い事柄が、遠藤周作の独自の、しかし非常に真実味を帯びた語調で語られる。

とかく奇跡を崇拝する宗教だと誤解されがちなキリスト教だが、この作品ではキリストが崇拝される理由を、極めて人間的な部分においている。ゆえに宗教は信じないと力んでいる日本人にも違和感なく受けいられる。キリスト教をただ崇拝するだけでなく客観的に見る事が可能な日本の小説家だからこそできた事だろう。
無力な愛

私の以前からの考察テーマでしたがこの書を読むことでより謎が深まった気がします.しかし夜明けが最も暗い闇の直後に訪れるように,より深まった謎は必ず明けてゆくものであると信じますし,良い意味でこの書は私の悩みを深めてくれました.浅学なもので遠藤氏がカトリック信徒であることさえ存じませんでしたが,小説家ならではの新約聖書の読み解き方,感嘆いたします.続編の“キリストの誕生”も素晴らしい書でした.



新潮社
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